レコーディングにライブに、多忙なギタリストの間で評価が高まってきているのがフロア型マルチエフェクターでしょう。先進のモデリングテクノロジーによってリアルなアンプやエフェクターのサウンドが簡単に手に入る上にスタジオでもステージでもいつでも同じ音が出せるということは、現場の違いによる音作りの悩みからプレイヤーを解放します。
BOSSがリリースしたGT-1000はフロア型マルチエフェクターのフラッグシップとして発売以来ヒットを続けていますが、某日、Rock oN渋谷店でBOSS GT-1000をさらに深く学ぶための勉強会が開かれました。実際に音を聴きながらのハンズオン研修。BOSSスタッフからクラス最高峰の真空管アンプモデリング技術の秘密が語られました。その模様を抜粋してお伝えします。
GT-1000 概要
BOSSのフラッグシップギタープロセッサー GT-1000はフロア型ギター・アンプ/エフェクト・ユニットです。
サンプリング・レート96kHz、AD/DA変換32bit、内部演算32bit float(浮動小数点)内部処理で楽器専用に設計されたBOSS独自のカスタムDSPを搭載し、業界最高クラスの音質を誇ります。しかしGT-1000のリアルなサウンドを決定づけるのは最新の『AIRD (Augmented Impulse Response Dynamics) テクノロジー』によるものです。
ギター、プリアンプ、パワーアンプ、キャビネット。エレキギターの音はこれらすべての楽器の挙動が影響を及ぼしお互いに干渉しあってできます。その作用までも詳細にシミュレートしたAIRD (Augmented Impulse Response Dynamics) テクノロジーについて解説していきます。
AIRDテクノロジー
GT-1000は真空管アンプのリアルなサウンドにこだわった結果、BOSSはAIRDテクノロジーの開発にたどり着きました。リスナーが聴くリアルなサウンドはもちろんのこと、プレイヤーが弾き心地として感じる真空管アンプサウンドのリアリティを実現しています。
Tube Logic 真空管アンプそのものをモデリングする
まずAIRDを語る前にその礎となったTube Logicテクノロジーをご紹介します。これはすでに販売中のKATANA AMP、Blues Cubeシリーズアンプに搭載されています。
ギターのピックアップから送られた信号はギターアンプ内のプリアンプで音色が作られ、パワーアンプでその信号を増幅し、スピーカーで空気振動へと変換されて耳まで届きます。この流れはけっして間違っていないのですが、ギターアンプのサウンドとレスポンスは実際にはこの様に単純ではありません。実際は各ファクターがリアルタイムに相互干渉を起こして動作しているのです。
たとえばスピーカーを例にすると、駆動したスピーカーユニットは発した音を自ら拾い、マグネットとコイルの動作で発生した電気信号をパワーアンプへ押し戻す動作をします。これによってパワーアンプに負荷がかかり電源を共有しているプリアンプへも影響を及ぼします。このように「1+1=2」のように単純ではない複雑な動きの中から倍音やサスティーンの出かたの変化といったアンプの個性が生まれてくるわけです。
以上の真空管アンプのパーツや各部位の相互干渉までをも忠実にモデリングした技術がTube Logicです。
AIRD – フロアマルチでTube Logicを使う
このTube Logicで行なっていたことの全てをフロアタイプのGT-1000で行うために生まれたのがAIRDテクノロジーです。
スピーカーの挙動まで含めた相互作用のモデリングがTube Logicでしたが、となると矛盾が生じます。GT-1000はあくまでマルチエフェクターであり、ギターアンプ以外にPAやヘッドホンなど接続先のスピーカーが異なります。
これまでの一般的なマルチエフェクターの多くは接続先を小型アンプ、大型アンプ、LINE OUT…など任意で選び、「プリアンプ部」でEQに近い音質補正をかけ対応していました。
AIRDも接続先を選択することに変わりはありませんが、プリアンプ部での音質補正ではなく接続先の機器にあわせて内部のプリ、パワー、電源、スピーカーなどのモデリング部位の挙動を変えることで対応します。つまり単純なEQ補正ではないということです。こうすることによってサウンドとピッキングレスポンスが一致し、プレイヤーが体感でこれまでにないリアリティを感じることが可能になりました。
これがBOSSの新技術 AIRDの正体というわけです。実はこれ以外にも企業秘密がたくさんあるということなのですが、解説できるのはここまで。GT-1000に続く新製品にもこの技術は活かされていくようです。
マルチエフェクターとしての本質
AIRDの解説が終わったところで続きはエフェクトについて。GT-1000はマルチエフェクターです。ということでエフェクトの質が問われますがそれは老舗のBOSS。GT-1000にはギターエフェクト史に名を刻んできた名器の開発で培ったアナログ/デジタル技術を全力投入しています。
特にBOSS独自のMDP技術を採用したX-DIST、X-OD、X-COMPはこれまでにない理想のペダルトーン得ることができます。
このほか空間/揺らし系エフェクトには DD-500 Digital Delay、MD-500 Modulation、RV-500 Reverbのアルゴリズムで設計された最新エフェクトを多数搭載。それらを自由にルーティングし好みのサウンドを作り上げることが可能です。そしてストンプペダル派にもうれしいエフェクターSEND/RETURN装備。これまでの財産を活かすことができます。
サウンドエディットは大型液晶ディスプレイによる操作のほかに、BOSS TONE STUDIOアプリを利用したBluetooth®によるワイヤレス・エディットも可能。
これらの業界随一のトーンを462mm * 248mmのコンパクトサイズに詰め込んだGT-1000。プロフェッショナルのために生まれたフロア型ギター・アンプ/エフェクト・ユニットはRock oN渋谷店にて展示中です。実際に触って聴いて実力をお試しください!