
Rock oN Presents BEHIND THE SOUND。都市を拠点にフリーフォームな活動を続けるトラックメイカーが紡ぐ、今の音。シグネチャーサウンドを持つ彼らのスタジオを取材し、日々のインスピレーションからサウンドの作り方、そして目指す境地までを綴るインタビュー特集。トラックメイカーが持つ豊富な文脈を丹念にチェイスし、今の音楽やシーンを形容することを目的としています。
第一回目は、煙で燻されたような音色とストリートやSFを仄かに感じさせるトーンを持った、東京を拠点に活躍するトラックメイカーRGLを特集。
よろしくお願いします!RGLと申します。Cosmopolyphonicというクルーに所属していて、他にはRLP、Tidal、Tetsuro Fujimoto、Submerse、MFPというメンバーがいます。Cosmopolyphonicの結成自体は今年で10周年になります。自分は5年前に加入しました。もともと同じイベントに出ていた友達同士です。Cosmopolyphonicとしてパーティーもやっていて、去年はLAのBenedikを呼びました。加入当時から自分はDJではなく曲作りをしてライブパフォーマンスをしていました。その時の名前はRigly Changです。渾名の組み合わせですが、ややエキゾチックな風合いですね(笑)。音としてはLAのビートシーンを意識したものをやっていました。当時はリリースはしていなかったのですが、ネットラジオがわっと出て来た時期でよく海外のネットラジオに流してもらっていました。その後にハウスやビートダウンものを聴き始めたんですが、そろそろリリースを考えようと思い名前も新たにRGLにしました。ちなみに今はまたハウスからオルタナティブファンク方面に広がっています。
そうですね。レーベルとしてはBな要素とハウスが絶妙に混ざったSteven JulienのApronとか、ファンク寄りならPPUことPeople Potential Unlimited、 NYのArcane、Mood Hutなどですね。要はEARCAVEというレコード屋が取り扱っているセレクションが好きなんです。今きているTシャツもPENDER STREET STEPPERSのモノです。
基本的には日本でも海外でも曲を作っている人たちがやっているDIYなパーティーが好きなので、レーベルパーティーとかが好きですね。そういう意味ではApronが日本でやったパーティーに出させて貰えたのは嬉しかったですね。Benedekも日本で呼んだ後にLAでも一緒にパーティーできて楽しかったです。それはいわゆるウェアハウスパーティーだったんですが、非常に良い体験でした。日本でやっているパーティーについては、今あまり行きたいと思っているものは無いんですよね。ちなみに今夜は久しぶりにBlue NoteでAzymuth観てきます。
難しいところですね。仕事をどうするかとか言語はどうするかとか、海外移住して生活するのはハードルが高いと感じています。でも音楽というカルチャーだけを考える絶対に海外の方が良いです。やっぱり第一に音楽との接し方が日本と違いすぎると感じています。向こうはもっとナチュラルじゃないですか。日本だと聴く人しか聴かないし、「よし、音楽聴くぞ!」という肩に力が入った感じがあるんですよね。特にDJ界隈でいうと、もちろん良い事でもあるんですが皆やってやるぞ感が強いんですよね。少ない機会でどうにか上に行こうとする感じというか。向こうはもっとナチュラルにただパーティーをやっている人たちが多い。それは選曲にすごく現れるんです。「俺しかできない事を見せてやるんだ〜!」というスタンスよりはカフェとかで掛かってそうなノリの曲を普通にクラブでかけちゃうみたいな。もちろんセンスが重要ですけど、そういうDJが日本には本当にいないなと思います。そういうところで差が大きいと感じています。
Instagramが多いですね。好きなアーティストはフォローしてストーリーとかも良く見てますし、メッセージのやりとりがも非常に多いです。僕が好きなアーティストはほとんどInstagram上でやりとりしてますね。本当にしょうもない会話から機材の話まで。しょっちゅうやってます。例えば向こうがドライブしながら掛けてる曲に「これ何?」って聞いて教えてもらったり。誰かがストーリーにSpotifyの曲をシェアしてそれを自分でもダウンロードして聴いたりとか。Instagramが完全に情報収拾の要になってます。さっきの海外シーンの話もそうですが、今はLAがアーティスト的にも近いし好きでよくチェックしてます。
僕は基本いつも曲作ってるタイプなんです。家にいるときは映画見てるかご飯作ってるかableton開いているかなんで。完全にライフワークですね。本当にいつも自然にやってるんで面倒だなと思うことは全くないです。だから機材にもある程度投資してます。たまにの趣味ではここまでやらないですね。あとは会社にいるときでも、忙しくない時はある程度自由なんで音楽を常に聴いてます。普段家で聞かないような80年代のチャートヒットを聴いて発掘したり。あのDJが掛けてたあの曲はこの文脈だったんだ〜など色々な発見がありますね。
これもきっかけはSNSですね。Instagramでは無いんですが、Twitter上で連絡が来たんです。Breaker Breaker自体は最初にRoss From Friendsの作品をリリースしてそれから止まっていました。Twitterのアカウントがあって僕はたまたまフォローしていたんですが、いかんせんTweetの数が少なく動きがないためフォロワーは30人くらいでした。そのとき僕はアカウントの写真をRuff Rydersの「R」ロゴにしていたんですが、Breaker Breakerのボスがそれを見つけて日本人でRuff Rydersのロゴという所に興味をもち、音源を聞いてくれて気に入ってくれたという流れでした。良い話でしょ(笑)?Breaker Breakerからは今までにEPを二枚出しています。
一番初めは10数年前にSONY ACID PROから入りました。当時は自宅のリビングにあるPCにインストールして使っていました。ただ使い方が全然わからなかったんで自己流で触っていました。最初はそれこそPete RockやDJ Premierみたいなのを作ろうとして躍起になっていました。しっかり作り始めたのは大学四年生の時でした。その時にableton Live7を買いました。当時myspaceやmixiを通じて音楽を作る友達が多くできたんですが、とにかく皆liveを使っていたので僕も導入しました。使い方としてはACID PROのようにアレンジメントビューにオーディオを貼り付けて編集する作り方でした。この作り方はつい最近までずっと続けていて、セッションビューは全く使っていませんでした。また当時はなるべくお金を掛けないようにしていて、今みたいにフリーのプラグインも良いものがあまり無かったので、ほとんど使っていませんでした。Breaker Breakerからの1stはもろにビートダウン系で、まずドラムサンプルを複数並べてそれを手で少しづつずらしたり、ピッチを変えて良い感じのグルーブになるまで調整するスタイルです。もともと作り始めた時にJay Dillaみたいな方法でヒップホップのトラックを作っていたので、その時のスタイルのままですね。
ドラムに関しては結構シンプルです。プラグインやAKAI MPC2000、Roger Mayer 456などのハードウェアを質感の付加に使っています。 丸いサウンドが好きなのでハイを削ってミッドを上げる作業がほとんですね。プラグインではWaves Kramer HLSやTapeはほとんど全ての曲で使っていました。サンプルをAKAI MPC2000にレベルオーバー気味でサンプリングして戻すという作業も頻繁に行っていました。さらにMackieのアナログミキサーも通しているので複数のプラグインとハードウェアで質感を少しずつ足して行く感じですね。サウンド的にはやはりヴィンテージな質感が好きなのでプラグインも自然とそういうものが増えています。あとはその辺の食器を叩いた音をレコーダーに録って取り込んだりもしていました。
Breaker Breakerリリース当時はほとんどYoutubeからのサンプリングですね。Youtubeからサンプルする理由は実はサウンドなんです。独特のコンプ感があるのと、15kHzくらいの帯域がゴッソリ削れているのでそれが自分のトラックの音にマッチしやすいんです。だからサンプル元をアナログやwavで持っていてもわざわざYoutubeで探して使ったりしています。結構周りでも音が好きでYoutubeからサンプリングしている人は多いですよ。特に外国のトラックメイカーに多いですかね。あとはRoland SP-404を通したりもしてました。ヒップホップトラックメイカー御用達のVINYL SIMエフェクトです。名前の通りアナログレコードのシミュレーターなんですが、ノイズを足さずにワウ・フラッター効果で少し揺らすことができるんです。90年代のミックステープのような汚れたサウンドが好きなので、ノイズに関しては自分で足すことが多いです。ただテープシミュレーターのプラグインによく付いている、付加用のノイズ音は不自然な感じがして嫌いなので、自分で探したノイズのサンプルを使ったり、Mackieのミキサーの使っていないチャンネルのゲインとボリュームを上げて出るノイズを使うこともあります。ちゃんとした電源から来る本物のノイズとして。
最近はUniversal Audio UAD-2を多用するようになりました。今使っているオーディオI/OのApollo Twin MKII Quadもそのために導入しましたね。Little Labs® Voice Of God Bass Resonanceはキックの調整用に必ずと言って良いほど使っています。軽めのキックを重くするときに最適なんです。テープシミュレーターみたいに倍音成分を増やすのではなく、これは狙った低域を足せるのでかなり重宝しています。
RGL名義でこれまでリリースしたトラックについていえば、ほとんどぶつかる帯域をEQで削るだけですね。fabfilterも持っていますが、バッサリ削るだけならabletonのEQ8を多用しています。軽いですし、アップデートされてより急峻なカーブが使えるようになったのが大きいですね。トラックメイクの段階でサウンドをローファイに作り込んでいるので、2MIX用に凝ったEQやミキシングは敢えてしていませんね。録音段階でも音量をバラバラに取り込んでいるのでそれによる質感の差も出ていると思います。まぁ僕はヴァイブス太郎なんで細かいことは気にするなということですね。
そうですね〜。最近はスタイルによって使うものが変わるので、絶対使うものをリアルに選ぶとmacbook、iPhone、ableton Liveになりますね。iPhoneは出勤中にトラックのチェックを欠かさずやってますね。abletonで気に入っているのはオーディオの扱いが柔軟なところですね。ワープ機能は本当に絶対使うし、あとはサンプラーのSimplerは大好きです。ピッチを簡単にグライドできるのが良いです。音程間のあるサンプルを扱う場合は弾き直すことが多いんですが、グライドさせると雰囲気が作りやすいですね。
機材についてはポリフォニックのアナログシンセが欲しいですね。BehringerのOberheimクローンに期待しています。ま、単純にPrinceが使っているというのが大きいですが。今作っているファンク系のトラックでLinn Drumと合うんですよね。あとはmoog minitaurも欲しいですね。シンプルなベース音源として。アナログモノシンセとしてArp Odysseyも持っているんですが、もっと簡単に扱えるのが良いですね。また今は自宅スタジオで作業していてモニターはFocal Shape65なんですが、もろにDIYな吸音材を壁に貼ったりしかしてないんで、Sonarworksも導入したいと思っています。スタイルとしてはもっと理論的な部分を勉強してしっかり作りたいですね。音楽は学んだことがなく楽器も何も弾けないので。こういうスタイルの音楽でもやっぱりちゃんと分かってた方が広がるなって思います。またギターやベースも弾けるようになって生演奏を取り入れたいというのもありますね。リードシンセだけでも生で弾くとヴァイブスが全然違いますからね。いや〜出来る気がしませんが(笑)。
ファンクですね!
RGL
東京在住のビートメイカー/DJ。Ross From Friendsを輩出したロンドンのレーベルBREAKER BREAKERから2枚のEPをリリースする他、DiskotopiaやDarker Than Waxといったレーベルコンピレーション等にも楽曲を提供している。また新たにレーベル”VFMT”を立ち上げ、ボローニャのNas1と盛岡のPepinによる楽曲を収録したカセットテープをリリース。プロデューサーコレクティヴ、”COSMOPOLYPHONIC”のメンバーとしても活動中。
RGL Bandcamp :https://rglmusic.bandcamp.com/
RGL Soundclud : https://soundcloud.com/rgl96
VFMT Bandcamp : https://vfmt.bandcamp.com
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interview by ACID渋谷