個人的にもお気に入りのマイクプリの一つであるMIllenia。傾向的にはとてもクリアなサウンドがですが、収録したサウンドが濃くなる、濃密になると言われるマジックを起こすことができるマイクプリです。
実際に使用してみると、その艶やかでスムーズなサウンドに酔いしれることができます!楽器だけでなくもちろんボーカルにもバッチリです。
MIllniaマイクプリには、大きくチューブ系とソリッドステート系のモデルが存在していますが、今回レビューのSTT-1 Originはその両方を兼ね備えた万能な1台です。
※今回使用しているモデルは、オプションのプラチナムフィニッシュバージョンです。
いかがでしたでしょうか?
非常にクリアなサウンドですが、ゲインも大きく持ち上げることができます。メーカー説明にもありますが、リボン系などの出力レベルの低いマイクなどにとても有効です。さらに音源にもよりますが、チューブ回路を上げていくと、空気感が非常に濃くなったサウンドに変化しているのを体感いただけたとおもいます。
これこそがMilleniaサウンドの持ち味です!
サウンドのポイント
1、チューブ系でありながらとてもレスポンスの早いサウンド特性
数ある真空管系のマイクプリの中でも特筆してアタックを捉えることができることから、クラシック収録で選択されている理由がわかります。
2、クリアかつゲインが大きく上げられる!
Milleniaマイクプリは、基本的に非常にクリアなサウンドです。そのため、録音ソースは選びません。大きなアドバンテージとしては、他のマイクプリと比較しもゲインが大きく上げられる点があります。そのため出力の小さいマイク(リボンマイクなど)を使う際には、メリットの一つとなります。
3、空気感が濃くなりスムースになるサウンド
チューブ回路を選択した際は、ならではの倍音成分が加わることによる音の立ち上がりのスムースさがプラスされます。
言葉で表現するのが難しいですが、音が濃くなる感じです(太くなるとは異なります。中域をメインとして音が濃密になるように聞こえます)。その質感が、最大の持ち味とも言えます。
4、チューブとソリッドステートの両方から最適な回路を選択
Twin Topologyとは、ピュアクラスAオールディスクリートによるFETソリッドステート回路とチューブ回路の両方を搭載したMilleniaシリーズのことを指しています。
録音される素材によって、よりクリアに収録する場合は、ソリッドステートを選択。倍音成分を含み音に厚みやならではの特性を付加させるならチューブを選択といった使用方法になります。
内部回路構成
オススメ使用シーン
1 クリアでありながらも、ドライなサウンドに艶が欲しい時
本製品は、ボーカルやストリングス、ギターなど収録ソースを選ばない万能マイクプリですが、サウンドの特性としてスムースに艶やかに仕上げることに向いているため収録素材がドライなサウンドに対して、より艶やかに仕上げたい場合に特にオススメです。
私自身マイクプリのサウンドをわかりやすく表現する際に、乾いた音、湿っている音など表現することがありますが、本記事でのドライとは乾いている質感の音を意味しています。
特に弦楽器などのこすって音を出す仕組みの楽器などでは、生で聞くとイメージで思っていたよりも音が乾いた印象になる場合があります。その際にMilleniaのマイクプリを使用することで艶やかな表現が付加されて、より演奏に深みが増すと思うのです。
2、チューブ系の倍音成分も欲しいけど、音の立ち上がりの早い音をしっかりレコーディングしたい時
チューブ系のマイクプリはソリッドステートと比べ、ややアタックがまろやかになる傾向があると思いますが、数あるチューブ系の中でもMIlleniaは、アタック成分の早い音もしっかりと捉えます。
3、プラグイン音源にリアルさを加えたい時
まさに通すだけという使い方。音源の方向性にもよりますが特に生音系の音源をリアンプするイメージで使うのがオススメです。音源に対しては、もちろんトライ&エラーでテストが必要ですが、さらにリアル感を高めてくれます。
MIllenia Mediaの歴史
Millennia Mediaは、クラシックのワンポイント収録でのリアルなサウンド収録の際にセレクトされる、マイクプリアンプの筆頭に位置しているのは誰もが認めるところです。
創業者でもあるJohn La Grouは、7歳の頃からエレクトリック・ギターの演奏を始め、同時にアンプやペダルボードの自作も行うような少年でしたが、なんと、1974年のLA Hiltonで行われたAES出展が、そのMillenia Mediaの原型となる最初でした。
John La Grouインタビュー動画(MIllenia公式サイトより引用)
HV-3シリーズの誕生についてインタビューしています。
その後、1985年にシリコンバレーのコンピューター会社、後のACERに勤めていたJohnは、数年後に出会ったCynthiaとともにMillennia Mediaを立ち上げました。
当初は、様々な業務をこなしていたMillenniaでしたが、1991年頃にクラシックやJAZZのレコーディング・エンジニアを勤めていたJohnが、サクラメント・シンフォニーのレコーディング時に、自身で作り上げたマイクプリを使い始めた事によって、全てが一変したのです。それが現在でもマイクプリのスタンダードとも言える、HV-3シリーズの誕生です。
ソリッドステート/チューブの別を問わずに、当時からサウンドに影響を与えるものを徹底的に排除して設計されたMillennia製品は、伝統的にトランスレス回路を用いた、立上がりの速い、ピュアなサウンドを実現しており、STT-1やHV-3Rの例外を除いて、フェイズ・リバースの回路さえ搭載されていません。
そのあとの成長は、既にみなさんもご存知の通りですが、特徴的なTwin Topologyシリーズをはじめとした、精力的な製品開発を進め、確固たる地位を築き上げました。
参考動画
STT-1をマスタリングで使用した場合( Millenia本国サイトより引用)
アベンジャーズなどの映画でサウンドエンジニアを務めたDennis S.sandsへのMillenia製品を使用したインタビュー( Millenia本国サイトより引用)
・STT-1 Origin
本記事のレビュー製品ですが、最高峰の1台。チューブもソリッドステートも両方搭載。
・HV-3C
ソリッドステートマイクプリを2CH搭載したマイクプリ
・HV-35
HV-3CのAPIモジュール対応版です。
・M-2B
真空管回路採用の2chバキュームチューブ・マイク・プリアンプ。
・TD-1
STT-1OriginのDIバージョン。オールジャンル対応の万能DIです。
Writer.オルタネイト福山