『SDX – DECADES』は、グラミー賞を23回受賞したエンジニア/プロデューサーのAl Schmitt(アル・シュミット)氏によってレコーディングされた SDX拡張ライブラリ。
Al Schmitt氏はこれまでに727回に及ぶレコーディング、160回のゴールド&プラチナ・ディスクの認定、23回のグラミー賞を受賞していて、過去には Ray Charles、Frank Sinatra、Sam Cooke、Madonna、Michael Jackson、Quincy Jones、Barbara Streisand、Paul McCartneyなど著名なアーティストのレコーディングを行っており、1983年にグラミー賞最優秀レコード賞を獲得したTOTOの楽曲 Rosanna(ロザーナ)のレコーディングを手がけた事でも有名です。
また、イエロー・マジック・オーケストラ (US版)のリミックスを行った事はYMOファンに良く知られていて、Capitol Studiosに導入されていたEMT250を積極的に使用した、クリアーなリバーブサウンドがとても特徴的なリミックスになっています。
Toto – Rosanna (Official Music Video)
そんな世界屈指のエンジニア、Al Schmitt氏が自らレコーディング、プロデュースした珠玉のドラムライブラリ SDX-DECADES
カリフォルニア州ロサンゼルスの「Capitol Studios」でレコーディングされた本作は、1920年代から1990年代後半までをカバーする5種類のドラムキットを総容量約99GBに収録。なんとTOTO の Jeff Porcaro が 「Rosanna」 で使用したオリジナルのスネアや、“Steve Ferrone”のパーソナルドラムキットのような象徴的なドラムキットも収録されているとの事ですので、今回はSDX-DECADES を使って TOTOのロザーナを再現してみたいと思います。
TOTO の Jeff Porcaro が 「Rosanna」 で使用したオリジナルのスネア
それでは早速、お目当てのスネアを探してみたいと思います。まずはキットを読み込んでドラムMidiデータを鳴らしてみましょう。
やはり、キットの名前からして「THE 1980s ROCK & FUSION KIT.」がサウンド的にも近いと思います。このキットにアサインされているスネアは6.5×14”Ludwig Black Beauty 1970sというモデル。SDX-DECADES付属のドキュメントによりますと、このスネアがRosannaのスネアで TOTO の Africa でも使用しているとの事です!
このキットを基本にして、他にどんなスネアが収録されているのか全種類試してみました。
6.5×14″ Tama Bell Brass 1980sというスネアがとても気になります。個人的な印象ですが、こちらの方がRosannaのPVに近い音かと感じました。
SDX-DECADES を使って ロザーナを再現してみた!
もう一度Rosannaの公式映像でイントロのドラムを聞いておきましょう。
Toto – Rosanna (Official Music Video)
そしてSDX-DECADESを使用してRosannaのドラムを出来るだけ再現したのがこちらの動画です。ドラムパートは Drummer3 と SDX-DECADES のみ、その他のパートはCubase10付属の Halionsonic SE を使用。ドラムがメインなのでその他楽器はボリュームを小さくしてあります。CDアルバムの音に近づけていますので、CD音源をお持ちの方は久しぶりにCDを聴いてみて下さい!
Drummer3のミキサーに搭載されたエフェクトを使ったメイキング動画もご覧ください。
今回はDrummer3搭載ミキサー、エフェクトのみを使用していますが、Drummer3はドラムの各ミキサーチャンネルをDAWにパラアウトする事も出来ますので、DAWのプラグインやサードパーティプラグインを各パーツにかける事も可能です。SDX-DECADES では Capitol Studios をホームスタジオとする Al Schmitt氏 にちなんで EMT250 を使いたい所でしたが、純正のエフェクトがかなり使えるので、ドラムはDrummer3で完結出来るのではないでしょうか。
Rosannaのイントロドラムだけを、ただひたすら楽しむトラックを作成!
70年近くの経験に基づく 9ポイント・サラウンド・システムにおけるマイキング!
Al Schmitt氏のマイクポジショニング哲学は70年近くの経験に基づいています。楽器が正しく集音出来ていないと判断した場合、最初にEQなどのエフェクターに手を伸ばすのではなく、楽器本来のように聞こえるまでマイクを動かします。
こちらの動画では Al Schmitt氏が SDX-DECADES で様々なマイクをどのように配置したか、マイクポジショニングを解説しています!
9ポイント・サラウンド・システム
スタジオの鳴りを完全にキャプチャするために9本のマイクが用意されました。Rosannaが収録された1982年当時には存在しなかったNeumann M149は Al Schmitt氏超お気に入りマイクとの事ですが、2014年に発売された Audio-Technica AT5045などを含め現代の技術、現代のAl Schmitt氏の感性でマイクが選ばれています。9ポイントで録音されたアンビエンスは、ドラムサウンドに温かみや自然な響きを加えてくれます。
- 1.Kick – AKG D12
- 2.Snare Top – AKG D452
- 3.Snare Bottom – Shure SM57
- 4.Hi-Hat – AKG 451 EB
- 5.Rack Tom 1 – Audio-Technica ATM350 (Later AKG C414)
- 6.Rack Tom 2 – Audio-Technica ATM350 (Later AKG C414)
- 7.Floor Tom 1 – Audio-Technica ATM350 (Later AKG C414)
- 8.Floor Tom 2 – Audio-Technica ATM350
- 9.Overheads – Audio-Technica AT5045
- 10.Overheads – Audio-Technica AT5045
- 11.Decca L (Front L) – Neumann M149
- 12.Decca R (Front R) – Neumann M149
- 13.Decca C (Front C) – Neumann M149
- 14.Rear Surround L – Sanken CO-100k
- 15.Rear Surround R – Sanken CO-100k
- 16.Height Front L – Royer R-122V
- 17.Height Front R – Royer R-122V
- 18.Height Rear L – Royer R-122V
- 19.Height Rear R – Royer R-122V
SDX-DECADES付属のグルーヴ集からフィルインをセレクトして並べ、9ポイントマイクのサラウンドを試聴してみました。とても自然にスタジオの鳴りが再現され、温かく心地良い空間です!
素材で勝負のSDX-DECADES
SDX-DECADESは歴史的価値の高いコレクションというだけでなく、現代の音楽制作に真のリアリティと特別な空気感を与えてくれる汎用性の高いライブラリです。Al Schmitt氏によって手掛けられたオーガニックで温かみのあるプリセット、TOONTRACKのサウンドデザイン担当者であるMattias Eklundによって制作されたクラシック・ビンテージからエッジの効いたモダンなものまで、ジャズ、ビッグバンド、ロック、フュージョン、ポップス、ファンク、AORなど、ドラムの素材が際立つジャンルの主役として活躍してくれる音源です!
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