こんにち和!Rock oN渋谷店スタッフのSCFED伊部です。
突然ですが、皆さんがリミックス制作を依頼されたとします。渡されたのはリリースされた音源の2mix素材のみ。さあどうしますか?
この素材だけでどれだけの表現力を出せるかがアレンジャーさんの腕の見せ所になりますが、パッと思いつく限りですと、
1)Audioデータがテンポチェンジに追従するソフトで全体構成を考える
2)2mixの美味しい場所をスライスしてソフトサンプラーに貼り付ける
3)スタッター系のプラグインを試す
4)フィルターをかける
5)ボーカルや楽器を抜き出すソフトを使用する
などなど、あると思います。
今回は、2mixのみという大きな制約を克服する手法 5)ボーカルや楽器を抜き出すソフトを使用する。
それを更に発展させたプラグインソフト「ACCUSONUS / REGROOVER PRO」
を使って2mixを楽器パートごとに分解する活用術をご紹介します!
素材をドラッグ&ドロップするだけでパートを分離!
『REGROOVER PRO』は、2mixトラックをパラのトラックに分離する事が可能です!2mixファイルを本体画面にドラッグ&ドロップすることで自動で解析、分離が開始され、4~最大6個のレイヤー(分離されたトラック)が表示されます。
分離にはAccusonusが開発した特許申請中の高度なオーディオ解析アルゴリズム、“A3テクノロジー”を採用しています。
これによりオーディオファイルを読み込むと、AI エンジンが意味のある組み合わせだと判断したトラックが自動的にレイヤーとして抽出されます。レイヤーはパラアウト設定出来ますので、ホストDAWのバス設定を行ってレイヤー毎にプラグインを使用するのも良いと思います。
分離されたレイヤーサンプル
00 – Avenger Original オリジナル2mix音源(VENGEANCE SOUND / Avengerのシーケンス)
01 – Avenger Original Layer 1 分離されたシンセレイヤー
02 – Avenger Original Layer 2 分離されたクラップレイヤー
03 – Avenger Original Layer 3 分離されたキック&ベースレイヤー
04 – Avenger Original Layer 4 分離されたハイハットレイヤー
分離されたレイヤーを聞いていると、パートの組み合わせや切り貼りするアイディアが浮かんで来ますね。
分離した後はサンプルを EXPANSION KIT にアサインして演奏可能!
各レイヤーをMIDIノートで再生できるほか、画面右下にある EXPANSION KIT に波形を範囲選択してドロップするとパッドにアサインされます。そして表示されているMIDIノートナンバー(C5など)で演奏が可能に!これはリミックス制作するのにとても便利な機能です。
またPAD Editor画面でドロップした波形をエディット可能です。波形の開始ポイントを微調整したり、エンベロープを調整して音の立ち上がりスピード、減衰スピードを調整することも可能です。1つのソフト内でここまで出来ると制作効率も良いですね!
『REGROOVER PRO』は、新たなサンプリング手法のひとつになり得る、次世代“AI ビートマシン”と言えるでしょう!
リミックス以外にもこんな使い方はいかがでしょうか?
1)眠っているお宝音源たちを再活用!
「サンプリングCD」という物をご存知ですか?20年ほど前、音素材と言えば「サンプリングCD」というCDパッケージがメインで、CDプレイヤーで再生してハードウェアのサンプラーでサンプリングしたり、パソコンで読み込み16bit 44.1Khz波形に変換して切り貼りする手間暇のかかる時代でした。今回紹介するREGROOVER PROは、そういった2mixで提供されていた素材集を再活用するのに便利ですね。
(さよならサンプリングCDセール) Crypton Future Media社:https://ec.crypton.co.jp/product/sc
2)カラオケ音源や耳コピー用音源制作に!
耳コピーする際、数多くの楽器が鳴っている中から欲しい音だけを聞き取る能力は経験を積むと容易になりますが、REGROOVER PROを使って分離すれば採譜がとても楽になります。耳コピー初心者だけでなく、カラオケ制作のプロの現場でも活用出来るでしょう。ちなみに私は耳コピーする際にEQを使用して、キックを採譜する時は高域を絞ったり、逆にハイハットの時は低域を絞って聞きやすくして作業しておりました。今後はこのプラグインが活躍しそうですが、ただ1点、ご注意頂きたいのが「分離させたい素材は30秒まで」という縛りがあります。なので実際は30秒以内のキリの良い所で音源を切り出して使用する必要があります。5分くらいまで読み込めると有難いですね。
パート分離の精度を上げる合わせ技 iZotope RX7で下ごしらえを!
iZotope社、RX7に搭載されている機能「Music Rebalance」を使用すると、2mixから任意のパート(歌、ベース、打楽器、その他)を消す事が可能ですので、欲しいパートを抽出してからREGROOVER PROで分離するという合わせ技が非常に有効です。先ほど使用した音源から打楽器トラックを抽出して、REGROOVER PROで分離した音源サンプルを下に用意しました。
05 – Avenger – Post – RX – Rtm 上記00 – Avenger OriginalからRX7で打楽器のみ抽出、シンセとベースが消えました
06 – Avenger – Post – RX – Rtm Layer 1 分離されたパーカッション(ボンゴ)レイヤー
07 – Avenger – Post – RX – Rtm Layer 2 分離されたクラップレイヤー
08 – Avenger – Post – RX – Rtm Layer 3 分離されたキックレイヤー
09 – Avenger – Post – RX – Rtm Layer 4 分離されたハイハットレイヤー
RX7処理なしでの分離と比べ、ボンゴのレイヤーが増え、ベースが消えたキックのみのレイヤーとなり、これでドラムだけのキットを作成する事が可能になりました。
REGROOVER PROを使用するとリミックス制作の幅がぐんと広がって、手持ち素材を再活用するアイディアも生まれるのではないでしょうか。私はハードディスクに眠る大量のサンプリングCD素材を掘り起こしたくてワクワクしております!
メーカーサイトにデモムービーがありますので是非チェックしてください!
Writer.SCFED伊部