連日盛り上がりをみせるLAで開催中のシンセの祭典「Synthplex2019」。連日現地からレポートしている瀬川英史氏より、ロサンゼルスを拠点としているエレクトロニックミュージックアーティストPablo Perez氏のインタビューが届きました!
Pablo Perez 氏
ロサンゼルスを拠点としているエレクトロニックミュージックアーティスト。即興スタイルでリズム、グリッチ、ノイズを駆使し、テクノ、ノイズ、ファンク、サイケデリック、アブストラクト、ジャズといったジャンルを超えて様々なサウンドを生み出す。
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Synthplex2019にて演奏された際、Pablo氏が用意したモジュラーシンセがこちらです。
Synthplexでのパフォーマンスの模様はこちら!
モジュラーシンセとの出会い
瀬川英史 氏(以下、瀬川氏) : モジュラーシンセを始めてみよう、またはモジュラーシンセだけでパフォーマンスしてみようと思っているビギナーには最初のきっかけが意外と難しいように思うんですが、パブロさんの場合はどのようにしてスタートしたのですか?
Pablo Perez 氏(以下、パブロ氏) : 私の場合はトラックを制作する際に自分で弾くギターやベースをレコーディングする時にDAWで使うプラグインシンセをどれにしようかとあれこれ模索しているうちに「ユーロラックとモジュラーシンセ」に関しての記事をみつけたのがきっかけです。それと同時に「Modular on the roof」というYoutubeのビデオに気づきそれがとても素晴らしかったのと同時に興味を引かれ、何か強力なものに打たれた感じがしたんですね。
そしてあれこれモジュラーシンセの事を調べて結果的にそれを購入してモジュラーシンセを始めたわけですが、Moog Mother 32とMake Noise 0-Coastのどちらを買うか迷った事をよく覚えていますよ。結局私は後者を選んだわけです。
0-Coastが郵便で届いた日の事を鮮明に覚えています。箱を開けてとても興奮してその日は約6時間も0-Coastと格闘しました。そして結局思うようなサウンドを得られる事ができませんでした。もしかしてこれは壊れているのかなとさえ思いましたよ。それくらい最初は何がどうなっているのか分かりませんでした。しかし、私はそこで諦めずにまたあれこれ0-Coastを触り続けどにか最初の私が思うよなサウンド出すことができるようになりました。そこにPico DSPというモジュールでリバーブを加えてみたら、とてもクールなサウンドが聴こえてきたんですね。それが始まりでそこからモジュールが増え、現在は12U 104hpのケース一杯のモジュールで活動しています。
私は音楽を勉強し、ベース、ギター、ピアノを一生かけて演奏してきましたし、それらの楽器を今でもとても愛していますが、モジュラーシンセ によってこれまでとは違ったフルにダイナミックな方法で自分を表現する”新しい自由”を手に入れたわけですね。
(瀬川氏より:パブロ氏の同級生の作曲家に聞いた話では、パブロは高校生の時にはかなりのレベルでジャズベースをプレイしていたし、その後オーケストレーションの講義も受けていたし、実際僕ともオーケストレーションの話を時々したりします)
お気に入りのモジュールは?
瀬川氏 : あなたのパフォーマンスに重要・不可欠なモジュールを3つ押してください。
パブロ氏 : まず1つめは、Noise Engineering社のBasimilus Iteritas Alter。これは私が最初の頃に買ったモジュールの1つですが、それ以来常に手元にあります。Basimilus Iteritas Alterはとてもダイナミックで、CVとGateを駆使して色々な方法で鳴らす事ができますしね。このモジュールは「音楽的」で素晴らしいユーザーインターフェイスを持っています。長い間使っていますがまだ完全に可能性を試したとは言い切れませんが。ドラムサウンドやベースサウンドに向いたモジュールです。
2つ目は、Malekko Heavy Industry社のVoltage Block。このモジュールを買った当初すぐに理解できなくて一旦手放しかけたんですよ。でも手放さなくて正解でした。8つのパターンの組みわせで、シーケンス、メロディーライン、CV値によるモジュレーションをリアルタイムで操作して即座にロード&セーブができるモジュールです。ライブパフォーマンスに於いて非常にプレイしやすくダイナミックな変化を生み出すのに使いやすいですね。私の即興的な演奏のスタイルによく合うんです。
3つ目は、Make Noise社のMorphagene。このモジュールもとても気に入っています。サンプリングした波形をグラニューラシンセシスをして、オリジナルのサウンドから別のサウンドへと再構築する、そんな事が自分の望むように自由にできますね。どんな音でもステレオでサンプリングできますし、私のグリッチ系の素材で構築していく私の演奏スタイルにも良くあうんですね。そしてそのサウンドをまたどんどんレイヤーしていく事ができるとてもクールなモジュールですね。
モジュラーシンセを始めてみたい方へ、7つの提言
瀬川氏 : これからモジュラーシンセ始めてみたい、または既にキーボード系のシンセは使えるがモジュラーシンセをどこから始めたら良いか悩んでる読者にアドバイスを是非!
パブロ氏 : 1. 今持っている楽器について知っていることは一旦忘れてモジュラーシンセは完全に新しいスタイルなんだという風に捉えてみてください。モジュラーシンセの良い所は色々な可能性がとてもオープンになっているところです。伝統的なシンセサウンドをモジュラーシンセで模倣してみる事も悪くはなにのですが、そこに拘らずにもっとオープンになってみてください。Be Open!
2. 最初にとにかく大きいケースを買ってください。Tip TopのMantisは良いケースだと思いますよ。色々な人に同じアドバイスをしいましたが、「確かに大きいケースを買っておいてよかったよ!」と何人の人に言われたかわかりません。
3. 2〜3個のモジュールを使って数日かけてそれらのモジュールだけで何ができるのか取り組むのも良い練習だと思います。このモジュールだけで人前でパフォーマンスしなければいけないとしたら何ができるだろうか?と想像しながらあれこれトライしてください。そしてそれからまた別の3つのモジュールの組み合わせへと進む、そんな練習をしてみてください。
4. 人前で演奏したりInstagram等のソーシャルへ自分のパフォーマンスを投稿してみてくdさい。私はモジュラーシンセを買って3ヶ月後に最初のライブをしましたが、それは私の人生の中で最も怖くて、それでいて最高の瞬間でもありました。しかしそこからとてもたくさんのものを得る事ができたんですよ。ライブギグをする事はあなたの習得スピードを10倍に加速しますよ。
5. 自分の演奏を最初は1分、次は5分、そして10分と演奏してみてなんども聞き返してみてください。
6. 間違いを恐れずに。ミステイクはこそがあなたの良き先生です。
7. とにかく楽しんで!どんどんモジュラーシンセの世界を探検してください!
Synthplex 2019
https://www.synthplex.com/